川治温泉逃避行vol.2(2022/7)

なぜか急いで川治温泉へと向かう

快適なツインの和洋室でごろごろしながら川治温泉を軽くリサーチしてわかったのは、どうやらコンビニもスーパーもない場所ということ。

あるのは小さな商店がいくつかと数軒の飲食店。

コンビニのない土地へ宿泊することにめちゃくちゃドキドキしてしまうほどいつの間にか都会に染まっていた自分に気づく。

もともとは田舎者のくせに。

翌朝、鬼怒川のホテルをチェックアウトしたわたしは電車で川治湯元駅へ。

鬼怒川で時間を潰してもよかったけどなぜか早く川治へ向かいたい気分だったし、早く行かなくちゃいけないような気分でもあった。

川治湯元駅看板
かわじい像
川治湯元駅

駅に着き下車してすぐに「あ、これ大丈夫かな」と思った。

その不安はこの土地に4泊することに対してではなく、ホテルのチェックインまでの約5時間をどうやって潰すんだという目先にある不安。

駅から十数分歩くと川沿いにいくつかの宿泊施設が並んでいる。

川沿いの温泉地というところは鬼怒川と同じなんだけど雰囲気はまったく異なり、こちらはあまり人の手が入っていない自然のまんまといった感じ。

濃厚すぎるくらいの緑に囲まれながら深く深く息を吸い込むと、都会の風味は一切混ざっていないような空気の旨さが味わえる。

川治湯元駅前
川治温泉 川沿い

時間潰しのチャンスタイムを潰す

温泉地の中心には足湯がある公園があったのでそこで時間を潰すことにしました。

もちろん足湯に浸かってはみたけどそんな長い時間を潰せるほどではなく、川沿いを歩いたりどんなお店があるのか軽く見て回ってはまたその公園に戻って、を繰り返していた。

外を歩いている人もほとんどいなくてさっきすれ違った人と短時間で再度すれ違ったりして、都会にはない気まずさがあった。

異質なものが混入したような気配を町から感じられるのはただの被害妄想か。

そして公園のベンチで一息ついているところ、老人が声をかけてきた。

5時間潰すのはなかなか厳しいもので途方に暮れていたタイミング。

これはいい暇つぶしになるかもしれないと考えて普段はまぁまぁ人見知りなんだけど頑張って会話をしてみた。

「チェックインは何時か」とか「こんなとこに4泊もするのか」とか。

こっちも「おいしいお店はありますか」とか「ずっとこの辺りに住んでいるのですか」とか聞いたりしてみた。

それなのに、びっくりするほど会話が通じない。

もちろん日本語だし多少の方言はあるけれどおじいさんの言っている言葉は理解できる。

だけどこっちの返答だったり質問に対して全然つながりがないものが返ってきたり、時にはそっから何も言わなくなったりして何度か挑んではみても会話がピタッとストップしてしまう。

こちらは時間を潰したい一心なのでできるだけおじいさんをこの場にとどめたい。

だけど会話が続かないものだからすぐに気まずい空気が二人の間で大きく膨らんできておじいさんは腕時計をチラ見して「もう昼がきてる」とかなんとか言って立ち去っていった。

不思議なものでとたんにさみしい気分になってしまった。 それだけじゃなくあまりにも会話が通じなかったせいか、どこか異国にでも来たかのような気にすらなってしまった。

川治 公園
足湯
足湯
足湯

時間潰しにも限界があって、初めからそうすればよかったんだけどその後ホテルの近くにある1軒の喫茶店に入った。

今日何度か店の前を通り過ぎて気になっていた喫茶店。

通りから中を覗こうとしてもなかなか店内が見えづらく、扉を開くのには少し緊張した。

昼時でお腹も空いてきたので何か食べよう。

ランチセットみたいなのはなかったのでナポリタンと珈琲を注文しようとしたのだが、ふとあることを思いついた。

同時には頼まずにまずナポリタンを食べ終わってから珈琲を追加注文した方が時間が稼げるじゃないの。

ちょっとでもここで長居しなければまた外での時間潰しに後戻りすることになってしまう。

そう考えてフード、ドリンクを分けて注文する作戦を決行した。

予想をはるかに上回るおいしさのナポリタン(サラダ付き)をゆーっくりと平らげた後、「うーん、まだ時間もあるしそれじゃあ食後に珈琲でももらおうか」てな顔をキメながら珈琲を注文。

だけれど珈琲が席へと運ばれてきたスピードは、ナポリタンと同時に注文した場合の食後ドリンクが出されるスピードとそれほど大差はなかったような気がした。

そんなもんだわね。

時間潰しの目論見が何もかもうまくいかない。

チェックインの時間まであと1時間くらい。

珈琲も飲み干し一息ついてさすがに居づらくなったのでお店を出たが、それからほどなくして強い雨に降られるという災難。

もう無理だ。 ロビーでチェックインの時間を待たせてもらおうと考えて早めにホテルへ向かうことにした。

露天風呂で聞く雨音

1時間も早く、しかも濡れネズミみたいなのが侵入してきたらホテルの人は怪訝そうな顔をするかもと不安に思っていたのだがフロントにはすでに数人が列を作っていた。

そして時間前だったが自分もすんなりとチェックインできた。

部屋の準備が整っていれば、予定の時間より早くチェックインさせてもらえるとこってありますよね。

ラッキー。

無理しなくてよかった。

部屋に入るなりバスタオルを持ってすぐにまた部屋を飛び出し温泉へ。

ホテルには大浴場と露天風呂の二か所のお風呂があったが、まずは露天風呂に行くことにした。

脱衣所を見渡して誰もいないことを確認すれば、仕事に寝坊した人がパジャマを脱ぐようなスピードで服を脱ぎ散らかして露天風呂に出るドアを開く。

雨はまだ降り続いていてさっきよりもずっと強くなった気がした。

誰もいない露天風呂に入ってバッシャバッシャとけたたましい音をたてる雨をぼんやり眺めていた。

逃亡者モードをオンにして「とうとうこんな場所まで逃げてきてしまったか」みたいなことを思ってみたけど、よくよく考えれば東京から栃木へ来ただけのマイクロツーリズム。

バカバカしくなって肩が全部浸かるまでしっかり沈んだ。