「東京タワー」 で照れるほどロマンチックな逃避行
東京タワー(日本・2004)
監督:源孝志
出演:黒木瞳、岡田准一、松本潤、寺島しのぶ、岸谷五朗、余貴美子、平山あや、加藤ローサ
江國香織の東京タワー
原作は江國香織の小説。
セレクトショップを経営している既婚者セレブの黒木瞳が、友人の息子である大学生(V6岡田くん)と不倫関係に落ちるお話です。
東京タワーを中心とした東京の夜景シーンが気分を高揚させる、照れちゃうほどロマンチックな恋愛作品となっています。
当然だけど不倫をテーマにしたものは駆け落ちへとストーリーが流れやすく、逃避行もの好きとしてはどうしてもそれを期待してしまいます。
この「東京タワー」はというと残念ながら(?)駆け落ちとまではいかないのですが、黒木瞳が岡田くんを別荘へと連れて行く場面が描かれています。
逃避行好きとしてはにやけてしまう展開。
考えてみれば人目を気にしながらこっそりと密会するという時点で少なからず逃避行だと思うし、不倫を扱った作品はどれもこれも気安くスルーしちゃいけないような気にさせられます。
「隣の駅には行けない」というセリフ
黒木瞳が、幼少期に電車で一駅乗り過ごしてしまったというエピソードを岡田くんに話すシーンがあります。
その時の見たことのない風景がトラウマとなりそれ以来乗り過ごさないように注意してこれまで生きてきたのだとか。
自分の知らない世界に足を踏み入れることに大きな恐怖心を持っている黒木瞳ですが、そのな未知の場所にも岡田くんとなら行ってみたいと言います。
まさにこれは逃避行に対しての思いを表しているセリフだと思いました。
旦那役の岸谷五朗の怖さ
逃避行ものファンの視点から言えば、どうしても最大の見どころは上でも挙げた別荘のシーンになるでしょう。
黒木瞳が岡田くんを誘って二人きりで訪れる葉山の別荘。
ベッドの中で二人だけの濃密な時間を過ごしていると、外から車の音が聞こえてくる。
旦那である岸谷五朗の突撃です。
現実ならば不倫カップルにとって絶体絶命の事態なんだけど、映画だとしても他人事だとしてもやっぱりドキドキしてしまう。
さっきまで天国にいたはずなのに一瞬で地獄の入口に立たされた岡田くんはバスルームに身を隠します。
ホラー。
絶対勘付いているはずなのに冷静に黒木瞳に接する岸谷五朗がこわい。
岡田くんの母親であり友人でもある余貴美子に不倫がバレた際にも、罵倒されシャンパンをぶっかけられた姿の黒木瞳に対して「とりあえず着替えた方がいいね」と岸谷五朗は常に冷静。
こわい。
プールの飛び込み台での岡田くんとの一騎打ちも印象的です。
二つ折り携帯電話の開き方
2人の恋愛だけではなく松潤(嵐)&寺島しのぶの不倫も並行してストーリーは進んでいきます。
黒木瞳は庶民的じゃなさすぎて感情移入しにくいため寺島しのぶの方に自分を投影しちゃった女性も多いかも。
時代のせいもあってか松潤の髪型がなかなか強烈なんだけど、実はそれが気にならなくなるほどにこの寺島しのぶ演じる役がぶっとんだ言動を見せてくれます。
松潤のバイト先に突然現れて発狂したり、後ろから車でボコボコぶつけてきたりとか。
過去の出来事から松潤の方もなかなかの強者というのがわかるんですが、そんなイケイケ松潤がこの時代に主流だった二つ折り携帯を片手でパチンと開きます。
その開き方、当時はスタイリッシュだったんだと思いますが今はちょっと恥ずかしく見えます。
でもこの携帯さばき、もしかすると歳月が経てば一周するかもしれません。
20年後、30年後くらいの若者からすれば見たことない携帯電話の形、そしてその携帯電話の小慣れた開き方、これがかっこよく映るかもしれません。
そんな可能性もけしてゼロじゃないのです。
なんか純喫茶やカセットテープとか昔のものが若い人に流行っているのでそんなことを思って観ていました。
山下達郎の FOREVER MINEのあそこ
もう逃避行なんて関係ない全くの余談にはなりますけど、エンディングにかかる山下達郎の「FOREVER MINE」について。
この映画で初めて聞いた歌だったけどこれがすごくいいんです。
曲の雰囲気もめちゃくちゃロマンチックで映画にばっちりはまっているし、変わった言葉を使わず普遍的な言葉で綴られたザ・ラブソングって感じの歌詞も堂々たるもの。
まさに名曲だと思う。
特に最初の「あな、た、を」っていう部分が癖になるリズムで、あそこが気に入って定期的に聴いてしまっています。
・美しいセレブ妻とこれまた美しい男子大学生のロマンチックな禁断の恋
・二人きりで過ごす別荘に旦那が突然乗り込んで来ちゃうスリル
・日常的に抑圧されていた主婦のはじけっぷり
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません